RESEARCH

 

ゲノム情報の発現は、生命現象の根幹に位置します。ゲノム・プロジェクトの成果を本当に価値あるものにするためには、塩基配列情報が生体内において有する活性を明らかにするという基礎的な研究を進めることが不可欠です。私たちは、この重要な目的の達成のために、ES細胞などの培養細胞を用いた生化学・分子生物学実験と、マウス発生工学実験(トランスジェニック・マウス、ノックアウトマウス、ゲノム編集)を組み合わせた強力な遺伝子機能解析系により、遺伝子発現制御研究を行っています。




哺乳動物のほとんどの遺伝子は、父親から受け継がれようが、母親から受け継がれようが同等に発現します(bi-allelic expression)。しかしながら、一部(1%程度)の遺伝子は、父親、あるいは母親から受け継がれたときにだけ発現し(mono-allelic expression)、このような発現様式を「ゲノム刷り込み」と呼びます。 ゲノム刷り込みの分子基盤は、父親と母親の生殖細胞で確立する DNAのメチル化状態の違いにあると考えられています。我々は、酵母人工染色体トランスジェニックマウスを用いて、DNAのメチル化の違いは受精後にも確立し得ることを示しました。現在、両親から子供のゲノムに伝えられるメチル化以外のエピジェネティックな「印」の探索を行っています。


(テーマの例)

A. ゲノム刷り込み配列の再構築

由来する親の性を記憶するゲノム配列を人工的に作ります


B. ゲノム刷り込み制御タンパク質の同定

ゲノム刷り込み情報をデコードするタンパク質をマウス初期胚から見つけます


C. マウスIgf2/H19遺伝子座トポロジーのゲノム編集

Igf2/H19遺伝子座内の遺伝子や制御配列の配置(位置関係)の意味を探ります


D. 刷り込み制御配列に付加される、DNAメチル化以外の精子エピゲノム情報の探索

ゲノムが由来する親の性を記憶するために生殖細胞で付加される、親から子に伝わるエピジェネティック修飾を見いだします


E. Igf2/H19遺伝子座のエピゲノムによる幹細胞(ES細胞やiPS細胞)の品質制御

質の高い幹細胞(ES細胞やiPS細胞)作製に貢献するために、付随するゲノム刷り込み問題の解明を目指します


F. 卵から受精卵に持ち込まれるクロマチン修飾酵素の役割の解明

クロマチン修飾酵素が、受精直後のエピゲノムの初期化にどのような役割を担っているか明らかにします





当研究室では、以前にヒト・レニンとヒト・アンジオテンシノーゲン遺伝子を保持する、トランスジェニック・マウスを作製しました。マウスには本来、血圧恒常性を維持するためのメカニズムが存在するにも関わらず、同マウスは高血圧になっていました(つくば高血圧マウス)。この理由として、ヒト・レニン導入遺伝子の発現制御機構の破綻が考えられます。そこで我々は、大腸菌人工染色体導入マウスやノックアウト・マウスを用いることで、血圧環境が、いかにしてレニン遺伝子の発現を制御しているのかについて研究しています。


(テーマの例)

G. 高血圧応答性cis制御配列の同定とその制御因子の探索

     高血圧になったときに、レニン遺伝子の転写がいかに抑制されるのかについて明らかに

   します。





(実験で使用する生物材料)

     微生物(大腸菌・酵母)

     マウスやヒトの動物培養細胞(ガン細胞・ES細胞・MEF など)

     マウス個体


(分子生物学・生化学・細胞生物学的手法)

1.   大腸菌形質転換による遺伝子クローニング

2.   動物細胞株の培養と遺伝子導入、RNAi法による遺伝子発現抑制

3.   酵母人工染色体(YAC)の酵母内ターゲティング

4.   パルスフィールド電気泳動法を用いた巨大DNAの解析

5.   サザンブロッティング

6.   バイサルファイト法によるDNAメチル化解析

7.   ノーザンブロッティング

8.   放射性同位体を用いたPCRによる遺伝子発現量定量解析

9.   Real-time PCRによる遺伝子発現量定量解析

10. レポーターアッセイ(ルシフェラーゼアッセイ)

11. ウェスタンブロッティング

12. 大腸菌による組換えタンパク質の調製

13. GST-プルダウンアッセイ

14. 免疫沈降法

15. クロマチン免疫沈降法

16. ゲルシフト法

17. DNA結合タンパク質のアフィニティー精製

18. in vitro反応によるタンパク質翻訳後修飾の解析

19. 免疫蛍光抗体法

20. 酵母One Hybrid, Two Hybridスクリーニング


(分子遺伝学・発生工学的手法)

21. 受精卵へのDNA顕微注入によるトランスジェニックマウスの作製と解析

22. マウスES細胞培養と遺伝子ターゲティング

23. ES細胞を用いたキメラマウス作製(胚盤胞注入法、8細胞期胚集合法)

24. 遺伝子ノックアウトマウス・ノックインマウスの作製と解析

25. CRISPR/Casシステムを用いたゲノム編集(培養細胞・マウス個体)

26. マウス体外受精

27. マウス胚の凍結保存

学類生向け研究テーマ紹介
身につけることが出来る実験手法
ゲノム刷り込み(エピジェネティクス)研究
高血圧と遺伝子発現制御研究